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2022.04.04

【祝・アカデミー賞受賞!】映画『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督のこと

こんにちは。編集部のアルデンテです。いやー、獲りましたね、アカデミー賞国際長編映画賞!受賞作『ドライブ・マイ・カー』を手がけた濱口竜介監督、実は何度も来仙しています(以前、私も「せんだいタウン情報S-style’1212月号でインタビューさせていただきました)。

仙台での上映会や映画イベントのほとんどを企画したのが、今回寄稿してくれた菅原さんです。「ショートピース!仙台短篇映画祭」の発起人の一人でもある彼女に、アカデミー賞受賞の祝福と感謝を込めて、濱口監督との思い出を書いてもらいました。じっくりたっぷりお読みください!

祝アカデミー賞ということで濱口竜介監督のことを書いてみた

それは『はじまり』から始まった

濱口竜介監督とのことを何か書いてみないかといわれ、改めて出会いからを振り返ってみた。

「ショートピース!仙台短篇映画祭2005」で上映した『はじまり』という14分の作品が、まさに始まり。ファーストショットからもう映画の空気がいっぱいだった。そこから’09年『パッション』、’10年『永遠に君を愛す』、’11年「311明日」、’14年には初めての濱口監督特集、’21年に大学時代の初期作品上映…と、映画祭にはリモートも含め5回の参加をいただいた。加えて、有志グループで行った’12年『親密さ』、個人で行った’16年『ハッピー・アワー』の上映会を実施。さらには’184812月に「他なる映画と」と題し3回の映画講座、’2110月に「精読」的映画講座…と、グループ上映会以降は全て濱口監督を招いての映画イベントとなっている。こんなに来てくれていたのだなあと、書き出してみて改めて驚いた。

'18年の映画講座の様子

『ハッピー・アワー』上映会の時は、その月を逃せば1年の間監督が日本にいないことがわかり、ものすごい勢いで年明け早々に開催した。映画講座は、あくまで個人的理由で「こんなことやりたいんですよー」と行った。今更ながら、随分わがままな申し出をしていたと思う。そして、よくもまあこんなわがままに付き合ってくれたものだと、改めて感謝の気持ちでいっぱいだ。

相反する、濱口竜介監督の2つの魅力

濱口監督とこのような関係が築けたのは、映画祭のほかにも、きっかけがあった。’11年東日本大震災後、せんだいメディアテークで立ちあがったプロジェクト「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(略称:わすれン!)だ。これに参加するために仙台に足を運んできた監督たちと、知人宅で一緒にご飯を食べたことが大きかったと思う。他愛もない話をしながら同じ釜の飯を食う、そんなことが何回もあった。濱口監督はすごくご飯をおいしそうに食べる、そしてちょっと目を離すと寝てしまう。それは、その後の上映やイベントの打ち上げの席でも見慣れた姿となった。本当に嬉しそうにご飯をいただくのだ。そこには緊張感はなく、ただただ楽しいばかりだった。自分はあの時間も含めて過ごしたくて、濱口監督に声をかけているのかもしれない。監督が観せてくれる映画も、ぎっしり書き込まれたテキストを携えての講座も、とても練りこまれていて緻密で隙がない。そんな監督がニコッとしてフワッとなってゴロンとなるのだ。この緊張と緩和の面白さが、濱口竜介自身の大きな魅力なのではないかと思う。そしてそれが制作する映画にも強く反映されていると思う。

'17年。何の話をしたかは覚えていないが、この後弾けた写真が…でも見せません(笑)

’2110月の映画講座を進めていくなか、『ドライブ・マイ・カー』が大変なことになり、海外からのやりとりも増え、「開催は大丈夫か、いつ優先すべき事項で断られることになるか」と覚悟していたが、ちゃんと約束を果たしてくれた(なんと、釜山国際映画祭からの隔離期間が講座の開催前日に開けた。奇跡に近い)。そしてその時も、びっしりと埋められたテキストを持参して、質疑応答の時間も取れないくらい、『悲情城市』についての考察を語ってくれた。次は’23年にとの申し出にも頷いてくれた(この時点ではまだアカデミー賞ノミネート前だったので、今現在どうなるかはなんとも言えないが、きっと耳は貸してくれると思う)。

’21年10月の映画講座にて

濱口監督との秘密の決まりごと

濱口監督と自分には、ちょっとした決まりごとがある。何かの時に自分が「そういえば監督からサインをもらったことがない」という話をした。「サインをもらったらもう次は会えない気がする」と言うと、「ではサインはやめておきましょう」となった。そして328日(日本時間)のアカデミー賞国際長編映画賞の受賞を挟んで、ちょっと気になったことをメールで投げかけていた。そのことに対して、受賞後「サインと一緒で封印しておきましょう 笑」との返信があった。大舞台の後のタイミングと、その返信の律儀さに思わず笑った。そして、この2つを守ることで、また自分は仙台で何かやろうと濱口監督に声をかけられると思った。またみんなでおいしいご飯をいただくのだと、すでにニンマリしながら計画を進めている。

「2年後会おう」と言った'21年の講座後、わずか2週間でフィルメックス映画祭の会場での再会

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aldente
アルデンテ

日々、3歳児に振り回される中、癒しはコーヒーとアルコールと人んちの猫。マンガアプリを渡り歩いて、隙間時間に読むのが趣味。「街のANTENNA」コーナー担当。