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2019.10.17

映画『火口のふたり』荒井晴彦監督インタビュー

文代梅津Kappo・別冊チーム

直木賞作家・白石一文の小説を、日本を代表する脚本家・荒井晴彦が映画化。『Wの悲劇』『探偵物語』でみずみずしい少女たちの姿をすくい取り、『KT』『共喰い』ではバイオレンス要素のある骨太な物語を手がけてきた彼が、『火口のふたり』では脚本・監督を務めています。
主人公・賢治(柄本佑)と直子(瀧内公美)は幼なじみであり、かつての恋人同士。直子の結婚式のために、故郷・秋田へ帰省した賢治は「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」と言われ、再び体を重ね合う…。本作で、二人きりの濃密な時間と揺れ動く心を描いた荒井監督にインタビューしました。

主演の柄本さん、瀧内さんは体当たりで演じていらして、最初に会うシーンからリアルな空気感がありました。演技に関して、監督から何か特別に指示したことはあったのでしょうか

荒井監督ないですよ。あのね、監督が演技指導することはほとんどないと思うよ。役作りという意味で言えば、二人ともそれぞれ自分でやってきてくれたしね

映画では、5日間だけという約束で二人きりの時間を過ごす様子が描かれますが、セックスシーンだけでなく食事の場面も多いですね

荒井監督世間では“おしゃれAV”みたいな言われ方もしてるけど、俺に言わせれば全然エロくない。現場ではエロく撮ったつもりだったんだけど、そうなってなかったね(笑)。ちょっと滑稽で、スポーツみたいでさ。でも、そういうのがリアルなのかもしれないけどね。食べるシーンについてはよく言われるんだけど、男と女が二人で過ごすって、話して食べて“する”以外にやることないんじゃないの、って思うんだよ。食事のシーンを意図的に増やしたつもりはないですよ

そうなんですね。映画では“身体の言い分”に身を委ねる、というセリフもありましたし、人間の三大欲求(食欲、性欲、睡眠欲)を強調しているのかなと思って拝見しました

荒井監督それは意識してなかったな。これは男と女の話なんだけど、それだけじゃない。最近は“反知性主義”というか、世の中に短絡的な思考が増えてる気がする。特に若者が間違った知識で間違った判断をしているんじゃないか、と思うんだ。バカな頭の言うことを聞くより、自分の身体の言うことを聞く、身体が求めているものを知るほうがよっぽどいいんじゃないの、ということだよね

舞台を福岡から秋田にしたのも、そのあたりと関係があるのでしょうか

荒井監督秋田で西馬音内盆踊りを観た時に、エロいなと思って使ってみたかったのが一つ。顔が編み笠や頭巾で見えなくてうなじだけっていうのも色っぽいし、昔は盆踊りとか夏祭りって性的なガス抜きの意味もあったでしょ。今もどっかに少しはそういう匂いが残っているだろうけど、西馬音内盆踊りはそれが色濃くあるような気がしてね。それに、秋田って仲間はずれの県なんじゃないかと思っていて。明治維新の時は奥羽越列藩同盟から抜けてる、東日本大震災では太平洋側と違って津波や放射能の被害はなかった、それを負い目に感じている部分もある気がするし。今は歴史を知らない人も多いから、そういうのをちょっとずつ映画の中に入れているところはあるよね。“本筋に関係ないセリフが多い”とかネットで言われたりもするけどさ(笑)

柄本さんがお風呂場で話しているセリフは、そういう意図があったんですね。セリフといえば、原作通りの部分が多いそうですね。今の話し言葉とはちょっと違う言い回しもあって、原作を大切にされているように感じました

荒井監督今の言葉とそんなに違わないと思うけど、そう聞こえるとしたら“ら抜き”や“い抜き”を使ってないからじゃないのかな。できれば“美しい日本語を使っている”と言ってほしい(笑)。原作は震災後に書かれたものだけど、言ってみればこれは“震災と震災の間の話”なんだよね。震災を戦争と言い換えてもいい。映画の終盤にもう一つの自然災害が出てくるけど、実際にそれがあったかなかったかは曖昧でもよくて、世の中が終わるかもしれない時に彼らがどう過ごすかを描ければよかったんです

(C)2019「火口のふたり」製作委員会

震災を経た私たちは日常が当たり前に続かないことを、もうすでに知っています。そのまなざしで『火口のふたり』を観る時、彼らの刹那的な衝動や行きつ戻りつする心が愛おしいものに映るはず。冒頭の美しいモノクロ写真や映画に寄り添う音楽など、様々な要素が盛り込まれた本作。ぜひ映画館のスクリーンで体感してください。

映画『火口のふたり』
監督/荒井晴彦
出演/柄本佑、瀧内公美
上映館/フォーラム仙台
2019年/日本/ファントム・フィルム]115分〈R18+〉

■イベント情報

「脚本家水木洋子と巨匠監督たち」
~朝日新聞編集委員・石飛徳樹さんとのトークイベント~
日時/11月27日(水)11:40~
会場/せんだいメディアテーク 7Fスタジオシアター
※イベント詳細は『せんだいメディアテーク』HPよりご確認ください
HP■https://www.smt.jp/

「荒井晴彦の映画魂2」
『赫い髪の女』『身も心も』特別上映
日時/11月28日(木)
上映館/フォーラム仙台
※詳細は『フォーラム仙台』HPよりご確認ください
HP■https://forum-movie.net/sendai

文代梅津
Kappo・別冊チーム

隔月5日発行の「Kappo 仙台闊歩」をはじめ、「ランチパスポート」、カフェや日帰り温泉などの別冊制作を手がける、S-style「じゃないほう」チーム。横丁探訪家のKappo編集長、カフェマスターあんこ、スイーツ女子ころりんこ、ランパス隊長まんじゅうこわいと個性豊かなスタッフ揃い。