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2025.08.23

映画『雪風 YUKIKAZE』来仙インタビュー!竹野内豊×藤本隆宏

熾烈な海戦を生き抜き、多くの仲間の命を救った駆逐艦「雪風」。終戦後も復員船として多くの人を日本へと運び、命をつないでいました。戦後80年となる2025年に、史実を基にした映画『雪風 YUKIKAZE』としてその姿が蘇ります。

今回は「雪風」艦長・寺澤一利を演じた竹野内 豊さん、砲術長・有馬岩男を演じた藤本隆宏さんに、役作りや現場での印象的なできごと、作品に対する思いを伺いました。

『雪風 YUKIKAZE』

STORY

真珠湾奇襲攻撃による日米開戦以降、すべての苛烈な戦いを生き抜き、どの戦場でも海に投げだされた多くの仲間たちを救い、必ず共に日本に還って来た一隻の駆逐艦があった。
その名を「雪風」。
いつしか海軍ではこの艦を“幸運艦”と呼ぶようになる。それは沈着冷静な艦長の卓越した操艦技術と、下士官・兵を束ね、彼らから信頼される先任伍長の迅速な判断によるものだった。
時にぶつかりながらも、互いに信頼し合っていく二人。そして「雪風」は、ついに日米海軍が雌雄を決するレイテ沖海戦へと向かうことになる…。

©️2025 Yukikaze Partners.

映画『雪風 YUKIKAZE』を拝見しました。

戦争をテーマにしながらも、一般的にイメージされる“戦争映画”とは異なる印象で、ヒューマンドラマのような親しみを感じました。今まさに世界で起きていることと地続きで、多くの人に観ていただきたい作品だと思います。

まずは、おふたりに出演オファーがあったときにどう感じたのか、お聞きしたいと思います。

竹野内 豊さん戦争や紛争は、世界のどこかで常に起こっていますが、残念ながらこの国でも戦争をより身近に感じてしまうことが増えてきました。
それぞれひとりひとりが本気で意識を変えていく必要があるのかもしれない。役者という生業を通じて、自分にできることはなんだろうかと考えていた頃に、この作品のお話をいただき、参加することにしました。

藤本隆宏さんうれしい反面、「自分でいいのかな」と思いました。
若い頃には戦争を扱った作品に出ていましたが、年齢を重ねるにつれてそういうチャンスはもうないだろうと思っていたんです。
でも脚本を読んで、自分と近い部分がキャラクターにあると感じて、楽しく演じられました。
正直、「雪風」のことは名前しか知らなかったのですが、調べていくうちに「ぜひやりたい」と。時代に合った作品だなと思うようになりました。

駆逐艦「雪風」を知っている方は、あまり多くないかもしれませし、戦地から生還した人々が“どうやって帰ってきたのか”という部分は、意外と知られていないと思います。そこを丁寧に描いていたのが印象的でした。

ストーリーが年代とともに進んでいく中で、「そろそろレイテ沖海戦があるのか」「次はミッドウェー海戦か」とハラハラするんですが、史実を知っているので「『雪風』は戻ってくるから大丈夫」と、安心してみていられました。

竹野内さんが演じられた艦長・寺澤は、非常に重責を担う人物です。演じるうえでのご苦労などがあれば教えてください。

竹野内 豊さんはい。
駆逐艦の艦長役は今回初めてでしたし、戦争を知らない自分に務まるのか…という不安を抱えながらも、色々と映像や資料を見たりしましたが、撮影に入るまで、確かな答えを見出すことはできませんでした。
ですが実際に撮影に入り、目の前に整列した船員たちキャストの皆さんの凜とした姿が本当に素晴らしく。それぞれが自分を信じ、自分の思うままに役を演じられていましたので、私もそこに自然と入ることで、皆さんに支えられて、いつの間にか“艦長”という立ち位置に立たせてもらっていた気がします。

映画を拝見して、艦長は非常に孤独な立場にあるのだと感じました。
竹野内さんご自身は、寺澤という人物をどのように捉えていましたか?

竹野内 豊さんリーダーとしては、常に孤独との闘いだったに違いありません。
寺澤は“武士道”を重んじる人物なのですが、これは寺澤だけでなく、作品全体のテーマでもあると思います。
戦争映画ではありますが、軍人として戦地に赴き、戦う模様を主軸とするのではなく、どんなことがあろうとも「必ず生きて帰る」「必ず生きて還す」「命をつなぐ」といった部分をメインに描かれています。

撮影時は護衛艦「みょうこう」の元艦長が監修で入ってくださっていたほか、横須賀基地に停泊していた護衛艦「やまぎり」の現役の艦長からもお話を伺いましたが、「私たちは乗組員だけでなく、彼らに関わるすべての大切な人たちの命も守らなければならない。そのことを腹に据えて任務にあたっている」と、お二人が共にお話されていて、その重責は計り知れないものですが、その言葉は役作りをする上で大きな指針となりました。

その思いは80年を経た今でも変わらずに残っているのですね。

竹野内 豊さんそうですね。今回、劇中ではさまざまなかけ声が出てきますが、海軍のかけ声は80年前からずっと変わっていないそうで、伝統としてしっかりと受け継がれていることに感銘を受けました。

それはとても興味深いですね。藤本さんは砲術長・有馬岩男役を演じるうえで、意識されたことはありましたか?

藤本隆宏さんそうですね。
まず、竹野内さんが現場で“艦長”として立っていらっしゃる姿に圧倒されました。
現場の中心にいて、スタッフもキャストも、みんながその姿に引っ張られていたと思います。
竹野内さんは撮影前から「何を伝えるべきか」を考えていて、その姿勢に自然とついていきたくなった。だから、僕自身は役作りに迷うことはほとんどなかったです。
あとは、個人的な話になりますが、僕は水泳をやっていた高校時代から佐世保や江田島で合宿をしていた経験がありますし、大学時代は朝霞の陸上自衛隊や横須賀でもプールを借りて練習していました。
そういう“現場の空気感”が、少しだけ自分の中に残っていたのかもしれません。

緊張感のあるシーンが多い中で、有馬というキャラクターには、少しおちゃめな一面も感じました。

藤本隆宏さん戦場の空気の中で、人間らしさやちょっとしたユーモアを出していくことはすごく大事だと思っていました。
実際、僕もセリフを間違えてしまって笑いが起きて、芝居にならなかったこともありましたけど(笑)、そのくらい現場の雰囲気はよかったです。
キャストもスタッフも本当に素晴らしくて、みんなに助けられた現場でした。

船の上での生活が長い乗組員たちの暮らしぶりには、家族のような一体感を感じました。

藤本隆宏さんセットの大きさが本物とほぼ同じなんです。
3~5メートルほどの空間に機材や道具がぎっしり詰め込まれていて、まさに「肩が触れ合う」ような距離感でした。
そこに1日一緒にいるわけですから、自然とチームワークが生まれて物理的にも心理的にも近くなったのだと思います。

現場でのエピソードで、特に印象に残っていることはありますか?

竹野内 豊さん本読みのときから、藤本さんの“有馬”が本当に素晴らしく、激戦が続く緊迫した場面が多い中、どんな時でもユーモアを絶やさないキャラクターですが、藤本さんの作る“有馬”はその優しさも相まって、時に切なくも感じ、じわじわと心に響いてきます。
戦時中、空気を和ませてくれる彼らのような存在がいなければ、きっと皆んな平常心を保つことは難しかったのではないかと思います。

藤本隆宏さん僕が印象に残っているのは、竹野内さんがずっと立ち続けていた姿ですね。
休憩中も座らず、そのまま“艦長”であり続けていた。
僕らはつい座ってしまったりするんですけど、竹野内さんは次のシーンのことをずっと考えて、集中を切らさずにいらっしゃった。その姿勢がすごく印象的でしたし、作品の中にも表れていると思います。見どころの一つになっているのではないでしょうか。

竹野内 豊さん僕はただ余裕がなく、いてもたってもいられず座らなかっただけです(笑)。もちろん本番中は集中力が途切れないよう気をつけていましたが、スタジオの撮影では、背景はほぼグリーンバックでしたので、眼に映る海上の光景を想像するにも、大海原で魚雷がどの方向から来るのか、敵機がどこにいるのか、目線ひとつとっても苦労しました。

戦闘機や魚雷なども、CGでの仕上がりを想像しながらの演技だったわけですね。

竹野内 豊さんそうですね。
魚雷のスピードや、どの角度から向かってくるのか、機銃を放ちながら向かってくるグラマン(アメリカ軍戦闘機)も見たことがないので、想像する難しさはありましたが、キャストの皆さん全員の想像力がお芝居に反映されたことで、情景として映し出すことができたのではないかと思います。

今回、竹野内さんは玉木 宏さんとは初共演だったとうかがいました。早瀬専任伍長を演じた玉木さんの印象はいかがでしたか?

竹野内 豊さん玉木さんは撮影前からすでに“先任伍長”としての姿ができあがっていたように思います。
立ち姿からしてすごく力強く、セリフの間合いやリズム、空気感も絶妙で、とても刺激を受けました。
お互いの役柄上、あまり言葉を交わす場面は多くなかったんですが、彼の持つ本質的な“兄貴分”としての風格や存在感は、本当に見事でした。

藤本さんも早瀬とは劇中で関わりが深い役でしたが、玉木さんとご一緒してみていかがでしたか?

藤本隆宏さん玉木さんとは以前にも共演したことがありますが、第一印象として前よりも体ができあがっているな、と思いました(笑)。
それはさておき、セリフもすべて体の中に入っているというか、(玉木さんに)近づくときも、自然と一歩引いてしまうくらいの威厳がありました。
それだけ役が“板についていた”ということだと思います。

では最後に、この映画『雪風 YUKIKAZE』から受け取った想いや、観る方へのメッセージがあればお願いします。

竹野内 豊さんこの作品を通して描かれているのは、教科書だけでは得られない歴史だと思います。
当時の人たちが、何を考え、何を大切にして生きていたのか──その心情を伝えることこそが、映画の力だと感じました。
知識として歴史を学んでも、記憶というのは時間とともに薄れてしまいます。
しかし映画は何十年も人の心に残り続ける。
80年という節目の年にこの作品を世に送り出せたことには、大きな意味があると感じています。

藤本隆宏さんそうですね。
僕はこの映画を観たとき、「これは戦争映画というより、ヒューマンドラマなんだな」と思いました。
戦争をテーマにしていても人間模様がしっかり描かれていて、とても見やすい作品です。
小さいお子さんから大人、ご高齢の方まで、幅広い世代の方に観ていただける、“見やすい映画”になっていると思います。
きっと何かを感じてもらえるはずなので、ぜひ多くの方に観てほしいですね。

本当にその通りですね。
戦争映画に苦手意識がある方でも、きっと自然に観られると思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!

©️2025 Yukikaze Partners.

『雪風 YUKIKAZE』

監督■山田敏久

出演■竹野内 豊、玉木 宏、奥平大兼、當真あみ、藤本隆宏、田中麗奈、中井貴一

主題歌■「手紙」Uru(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)

[2025年/日本/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/バンダイナムコフィルムワークス]

2025年8月15日公開/宮城県内上映館

TOHOシネマズ仙台、MOVIX仙台、イオンシネマ名取、イオンシネマ新利府、109シネマズ富谷、イオンシネマ石巻、ユナイテッド・シネマ フォルテ宮城大河原

※上映期間については各映画館のスケジュールをご確認ください

aldente
アルデンテ

日々、5歳児に振り回される中、癒しはコーヒーとアルコールと人んちの猫。マンガアプリを渡り歩いて、隙間時間に読むのが趣味。いまチェックしているのは「胚培養士ミズイロ」「メダリスト」「煙色のまほろば」。「街のANTENNA」コーナー担当。