2023年9月に刊行された『777 トリプルセブン』(KADOKAWA)。『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』に続く、殺し屋シリーズの4作目となり、実質的にはブラッド・ピット主演で映画化もされた『マリアビートル』の続編に当たる本作。仙台在住の人気作家に近況を含めた新作への想いを伺いました。
『777 トリプルセブン』(KADOKAWA/1,870円)
ツキに見放されている殺し屋の七尾。通称「天道虫」と呼ばれる彼は、超高級ホテルの1室に絵を届ける仕事を請け負う。「簡単かつ安全な仕事」のはずだったが、なぜか殺し屋たちが続々と現れ、七尾は彼らの争いに巻き込まれていく。一方、同じホテルには驚異的な記憶力を持つ女性・紙野が、ある人物から逃れるために身を潜めていた。
伊坂そうです。ここ10年くらい連載はやってなくて、ほぼ書き下ろしなんです。2021年から2年くらいかけて書いてたのかな。『マリアビートル』がハリウッドで『ブレット・トレイン』という映画になったんですけど、主演のブラッド・ピットさんが楽しかったみたいで「続編はないのか」っていう話がエージェント経由で来たんです。僕はほかに書かなきゃいけないものもあるし、「好きに作ってもらっていいですよ」っていう感じだったんですけど、プロデューサーから「でも、イサカが作ったほうがおもしろくなりそうじゃない?」と。「そう言われたら悪い気はしないなあ」と(笑)、プロットだけ考えることにしたんです。
伊坂そうなんですよ。小説の最初に「絵を届けた先が間違ってる」というコントみたいなエピソードがあるんですけど、そのシーンを書いた時に「あ、これは僕が書かないとおもしろさが伝わらないかも」と不安になっちゃって。セリフの間とか話の段取りとかが。で、書き始めたら「結構おもしろいぞ」と思えて、「さささっと書けば3ヵ月くらいでできるんじゃないかな」と思っていたら2年もかかっちゃって。まあ、僕の場合、毎回そうなんですけどね。
伊坂意識してますね。今の人たちって時間がないから、映像でも音楽でも短いものを求めるじゃないですか。だから、とにかく展開を早く、全部をぎゅーっとしたい、と思っています。予想できるようなところは全部はしょりたい。今回も、あるキャラクターが死ぬところを描かずに、次のシーンで「〇〇が死んだんです」とセリフで説明しました。読者の予想を裏切りたいというか、段取りを省きたくなるんですよね。せっかちなので(笑)、次に行きたい。そういう、はしょり方とか語る順番に個性が出ると思います。
アクションシーンも続くと自分で書いていてつまらないので、逆にアクションしないで2秒で終わるパターンをやってみようかな、とか。説明が必要な設定だと長くなっちゃうから、回りくどくなっちゃうなと思って設定ごとなくしたりとか。「どうやって短くするか」は常に頭にあるかもしれないですね。
伊坂高校時代に見た『ミッドナイト・ラン』というバディものの映画がすごく好きで、それ以来、男性のコンビはよく登場させてます。反発しあいながら段々友情を深めていくのとか、好きなんですよ。2人だとかけ合いで進めやすいし、分かりあう喜びや別れちゃう寂しさも描けますし。そういうのがたぶん好きなんですよね。
今回の小説だとマクラとモウフは思い入れがあります。ホテルを舞台にすると決めた時に、シーツを使って倒すアイディアはすぐに浮かびました。最初は小柄な男の子の2人組だったんですよ。そのバージョンが結構好きだったんですけど、途中で変えたんです。今でも男性バージョンに未練が少しあります(笑)。
伊坂毎回、名前は結構悩むんですよ。6人組のカマクラとかヘイアンは奥さんのアイディアです。統一感のある呼び名がいいなと思って、曜日とかアルファベットとか考えていたんですが、ある時奥さんがひらめいて。“今まで(奥さんからもらったアイディアの中)で一番助かった”と喜んだら“じゃあ今までは?”と不満そうでした(笑)。
伊坂そこに気が付いてくれるのはうれしいです! あれは一応、技術的に頑張っているつもりなんですよ(笑)。自己満足ですけど、「いかに情報を少なくして、読者に分からせるか」をどの作品でも考えているので、上手くできると「うわー、俺頑張ってるぞ」とちょっとうれしい(笑)。
あと、会話劇だとページの下半分がスカスカになっちゃうのが嫌で、1行に3人分入れたりとか、地味にこだわりはあります。
伊坂ありがとうございます。昔から、よく会話ばっかりだよねって言われるんですけど、意外に工夫しているつもりではいるんですよね。自分ではそういう点をあまりアピールできないので、気づいてくれてうれしいです。本1冊、早い人だと2~3時間で読んじゃうと思うんですけど、僕は2年かけて書いているので(笑)、そういうところまで見てもらえたらありがたいです。
伊坂さんのインタビューと撮りおろし写真は、S-style12月号にも掲載!
Web版とは違うトピックを掲載していますので、こちらもお見逃しなく。
てんびん座O型の新人編集者。好きな食べ物は笹かまぼこ。自分史上最もおいしい笹かまぼこを決定すべく、色々なお店の笹かまぼこを食べ比べる日々を送る。どれもおいしくて選べそうにない。
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