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2018.12.19

『麦の日記帖』出版記念 作家・佐伯一麦トークイベント開催(12/22)@仙台文学館

作家が解説する作家の日常。写真で見る、音で聞く『麦の日記帖』

こんにちは。川Pです。

自然、文学、音楽、美術、旅、そして東日本大震災。
仙台に住まう小説家が災前・災後の日々を綴った貴重な日記文学である
著者3年ぶりの新刊『麦の日記帖』が発売されました。

出版を記念し、12/22(土)仙台文学館で佐伯一麦さんによるトークイベントを開催します。

日記の中に登場する風景や音を著者のトークとともに楽しむイベントです。
入場無料ですので、ぜひご来場ください。当日はサイン会も開催します。

12/22(土)14:00~15:30
場所/仙台文学館(アクセスこちらから
入場無料(事前申し込み制です)

お申込みはKappo編集部まで
電話 022-266-0912
メール kappo@pressart.co.jp
プレスアート公式サイトからのお申し込みも可能です

共催/仙台文学館

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佐伯一麦プロフィール

1959年(昭和34)年、宮城県生まれ。『ショート・サーキット』(1990年)で野間文芸新人賞、『ア・ルース・ボーイ』(1991年)で三島由紀夫賞、『遠き山に日は落ちて』(1997年)で木山捷平文学賞、『鉄塔家族』(2004年)で大佛次郎賞、『ノルゲ Norge』(2007年)で野間文芸賞、『帰れぬ家』(2013年)で毎日芸術賞、『渡良瀬』(2013年)で伊藤整文学賞を受賞。第1回仙台短編文学賞の選考委員を務める。

本文より

「社会的な復旧や復興は必要だが、人一人一人が、まず手強い日常を取り戻さなければならない」

「梅雨明けしても、今年はアオバズクの啼き声がまだはっきりと聞こえてこない。数度聞いたような気もするが、確かではなく、震災によって土地の風景が一変したので、目印を失ってしまったのだろうか、と案じている。」

「江戸時代の大飢饉の際に無縁供養が行われたという場所に屋台が立ち並び、灯籠を流し終えた人々が川風に吹かれながら食べ物を頬張っている。死者を偲びつつ焼き鳥をつまみに酒を飲みながら、過去の災厄の上に我々は生きている、という実感を今年ほど抱かされたことはなかった、と痛切に思う。生死の境を淡くして暮れなずむ空に、無数の秋津(トンボ)が飛び交っていた。」

「クラシック音楽は、言ってみれば、決して生きていた時代が幸福とはいえない過去の音楽家たちがのこした遺言、遺書のようなもので、演奏家は楽譜からそれを解読し、現在に甦らせる。そして自分たち小説家もまた、犠牲者を含めた過去の死者たちとのコミュニケーションを持ち続ける役目を担っているのではないか、と発言した。」

「震災から一年経った。午後二時四十六分。仕事の手を止めて、連れ合いとともに、海のほうへ手を合わせる。静かな一日だった。」

「防潮防風林が失われたためか、風が強い。松が倒れ、その下で砂をかぶり枯れた藪が続いている光景は、戦地は知らないけれど戦地のようだ、と連れ合いが言う。実生の松の芽が数センチだけ出ているのに目を留め、岸の両側に白砂青松と田んぼのみどりが広がる貞山堀の風景が戻ってくることを祈念した。」

「庭の枝垂れ桜の葉が落ちて、沿岸部の瓦礫処理場の煙が見通せるようになった。先週から、息が白く見えるようになった。残暑が続いていたと思うと、秋を通り越して、あっという間に冬になってしまった印象がある。」

「この秋で、新人文学賞をいただいて作家となってから三十年目に入る。その節目に、遅ればせながら、一生ものの机を持つこととなり、この机で、あとどれだけの作品を生みだすことが出来るだろうか、と三十年目の初心に立ち返る思いがする。」

「そしてまた、空の青は、震災以降、何度も仰ぎ見ることとなった。その色は、こちらへ迫ってくるのではなく、遠い憧れのように招き寄せる。その向こうには闇があり、死者に通じている、と感じられる。」

「野間文芸賞の授賞式で上京する。今年は、選考会で私も推した笙野頼子さんの『未闘病記 膠原病、「混合性結合組織病」の』に決まった。私小説は、作者自身の内面を描くものだ、と思われているかも知れないが、実は作者の五感(痛覚も含め)を通して感受し認識した他者を書くものでもある。自己免疫疾患である膠原病という他者を、まさに身を以てリアルに描き出した本作は、そうした私小説の独自な達成だと評価した。」

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せんだいタウン情報 S-styleの非公認キャラクターとしてその名をほしいままにしてきた癒しロボ。これまで連載してきた4コママンガを振り返ってみたり、癒しロボが注目する情報などをお伝えしていきます。