11月3日(金)から、宮城県内では7箇所の映画館で上映される映画『さよならほやマン』。
公開を目の前にして、主演のアフロ(バンド「MOROHA」のMC)と、庄司輝秋監督が仙台を訪れ、インタビューに応じてくれました。
本作への想いから、宮城県石巻市網地島で行った撮影の様子まで、映画をさらに楽しめる話をたくさん聴いてきましたよ!
~あらすじ~
豊かな海に囲まれた美しい島で、一人前の漁師を目指すアキラは、「ほや」を獲るのが夏の間の仕事だ。船に乗ることができない弟のシゲルと2人、島の人々に助けられてなんとか暮らしてきたが、今も行方不明の両親と莫大な借金で人生大ピンチに直面中。そんな折、都会からふらりと島にやってきたワケありっぽい女性、漫画家の美晴が兄弟の目の前に現れた。「この家、 私に売ってくれない?」その一言から、まさかの奇妙な共同生活が始まる。3 人のありえない出会い、それは最強の奇跡の始まりだった。
庄司脚本を書いてる最中、この主演を一体誰ができるんだろうって考えた時に、その人そのものがこの主人公を体現できる人じゃないといけないと思ったんですよね。“本物の漁師さんを使おうか”とまで考えてたんですけど、それはさすがに難しいなと思った時に、たまたまYoutubeでアフロさんのインタビューを目にしたんです。アフロさんの自分自身を客観的に笑って話せるような、そういう人間性の豊かさを見てこの人かもしれないなって思ったんですよね。そこで大阪までライブを見に行くことにしたんです。ライブを見て、この人だと思ったら手紙を渡そうと決めて、手紙を握りしめながらライブを見たんです。ライブが終わった時にはもう確信が持てたので、楽屋に行って手紙を渡しました。
アフロ嬉しかったですね。最初に台本を渡された時、初期タイトルが『ほやマン』だけだったんです。実は、将来的にはいつか役者の話とか来るのかなって妄想はしてたんですけど、最初に来た作品が『ほやマン』。なかなかこれ、パンチのあるデビューになりそうだと。正直『ほやマン』というタイトルはB級映画の感じもあったから、“これ大丈夫かな”っていう気持ちで台本を開いたんです。でも読んでみたら重厚な、人間味のあふれる作品だったので、お願いしますと返事をしました。
庄司(アフロは)一枚岩って感じですね。どこを切ってもアフロさんというか。表裏もないですし、ライブでの熱量も、今喋ってるクレバーなアフロさんも、いつでも同時に存在している。そういう、この人そのものって感じがずーっと続いてます。
アフロ(庄司監督は)結構ギャップを感じる機会が多かったですね。長編監督という経験自体が初めてだったそうですが、経験豊富な助監督や百戦錬磨の撮影スタッフがいる中で、監督は決して譲らなかったんです。全体的な進行の都合で、こうした方がいいんじゃないかって、周りの人たちに言われた時に、監督が譲らなかった場面を俺たち俳優部で見てた。それを飲み込める助監督たちもかっこいいなと思いましたし、ここで折れなかった監督の姿を見れたのも俺はすごく良かったです。ちゃんと撮りたいものがあって、それに関してはどんな状況でも譲らない人なんだって感じました。主人公のアキラみたいに、もがきながら人生をどうにかしなきゃっていうのを、今も続けているんだと思うんですよね。どうやったら作品を知ってもらえるかっていうところも含めて。だからこの人からこの作品が生まれたっていうのは必然だなと思いました。
庄司僕は石巻市出身で元々ホヤが身近にあったということもあるんですが、大人になってから生態について調べてみると、すごく面白い生き物だということがわかったんですよ。「若い頃は好きに泳ぎ回ってどこに住もうか決めるけど、ここだと思った場所を見つけると定住するようになる。あとは徐々に背骨と脳みそがなくなって、一生をそこで生き続ける」っていう生態を知った時に、“すごいな”、“人間みたいだな”、“ある意味今の俺みたいだな”って思ったんです。当時38歳くらいで、それなりに人生も進んでいって、仕事もある程度順調だし“これで自分は満足かな”って思いかけてた時だったんですよ。でもその時になぜか体調を崩して行き詰まっちゃったんですね。この行き詰まりはなんだろうって思った時に、もしかして自分は本当にやりたいことをやってないんじゃないかって気づいたんです。そんな時にホヤと出会って、これは「人生の岐路に立つすべての人が共感できるような悩み」を描くような、普遍的な映画になり得るんじゃないかと予感したんです。
アフロ経験が血肉になっていく速度が凄まじかったです。というのも自分が1番何も知らない状態で現場に入ることって、音楽の現場ではそう無いので。長年やってると俺のことは俺が1番わかってるし、俺のステージは俺らが仕切るって思ってやってるんですけど、役者の現場に入ると全く違う。自分よりずっと若い、阿部シゲル役の黒崎くんの方が先輩なんですよ。キャリアっていうよりも、彼はずっと映画が好きで、役者になるんだと思って生きてきたやつだから、全然俺よりもふくよかな知識と感性を持ってたんですよ。だから年齢が一回り以上も違う彼に、とにかく色々教えてもらいました。もちろん高橋美晴役の呉城さんにも教えてもらいました。黒崎くんも交えてアキラについての解釈を言い合いました。そこで貰ったアドバイスを全て試したおかげで、主人公アキラの人物像が徐々にわかるようになっていきましたね。
アフロそうなんです。船舶に関しては座学がきつくて。作中で船を運転するシーンがありますが、実際のところ、免許や事前の勉強がすごく役に立ったかと言われると、ぶっちゃけなくてもできた撮影だとは思うんですよ。でも、抜くか抜かないかは別として、刀を差してるってことが自信に繋がりますよね。”やってきた”という自負ね。あとやっぱり、きちんと学んできたことによって、地域の漁師さんからの目が違いましたね。
アフロ自分は出身が長野県の田舎の方で、“山”に囲まれた場所で育ったわけですが、主人公のアキラは四方が“海”に囲まれていた。それって海と山の違いでしかないよなと思ったんです。「どこにも行けないんじゃないか」「俺はここで人生終わっていくのか」という想いは、俺があの山に囲まれていた時に抱えていたものだったんです。もし地元に居たままだったら、こういう思いを抱えてただろうし、“地域に縛られる感覚”は俺の中にもあったものだから、アキラは違う世界線の自分だなって思ったんです。でもいざ東京に出ても、やっぱり自分がこれ以上出られないエリアっていうのが心の中にはある。山に囲まれて、海に囲まれて、色んなしがらみに鎖で繋がれて、“ここから出られない”という感覚は、ぶっちゃけ土地に限らずどこにでもある話だと思う。「地元から東京に出ればその感覚から解放されると思っていたけど、実は田舎のせいにしてただけ。自分でその鎖をこさえて、自分で縛っていたんだ。これをどうにかしなきゃいけないんだ」ってことを、俺はMOROHAで歌ってきたから。そういう気持ちをこの環境にフィットさせて、言葉をフィットさせて。”アキラの精神”はもう俺の中に住んでるものだったから、そういう意味では、すごくやりやすかったです。
さよならほやマン
上映期間/2023年11月3日(金)~
県内上映劇場/TOHOシネマズ仙台、MOVIX仙台、フォーラム仙台、イオンシネマ石巻、 シネマ・リオーネ古川、109シネマズ富谷、 ユナイテッド・シネマ フォルテ宮城大河原
公式HP/https://longride.jp/sayonarahoyaman/index.html
てんびん座O型の新人編集者。好きな食べ物は笹かまぼこ。自分史上最もおいしい笹かまぼこを決定すべく、色々なお店の笹かまぼこを食べ比べる日々を送る。どれもおいしくて選べそうにない。
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