芥川賞受賞作『おらおらでひとりいぐも』から6年。
岩手県遠野市出身の作家・若竹千佐子さん第二作目の小説『かっかどるどるどぅ』が刊行されました!
今回は仙台 FORUS 3Fの『BOOK SPACE あらえみし』にて行われた刊行記念トーク&サイン会で、作者本人(以下:若竹)に最新作のお話を聞いてきましたよ。
ー心もとない毎日を送る4人は、引きつけられるように古いアパートの一室を訪れるようになる。そこでは片倉吉野(かたくら よしの)という不思議な女性が訪れる人たちに食事をふるまっていたー
女優の夢を捨てきれず、つましい暮らしを送る60代後半の悦子(えつこ)、舅姑の介護に明け暮れ、気づけば自分を持たぬままに68歳になっていた芳江(よしえ)、大学院を出るも就職氷河期で非正規雇用の職を転々とする30代の理恵(りえ)、生きることに不器用で、自死まで思いつめる20代の保(たもつ)など、各々の生きづらさを抱えた登場人物たちを中心に物語は進行していきます。
若竹“みんなで生きよう”というテーマのもと小説を書きたいと思ったし、その必要性を自分の中に感じました。というのも一作目の『おらおらでひとりいぐも』で芥川賞を受賞してから6年程経って、その間に4人の孫が出来たんです。でもこの先の世界で、果たして孫たちは幸せに生きていけるのかという危機感を感じます。生きる喜びが阻害される世の中になるのではないかという恐れから、おばあちゃんとしての私が出来ることをやらなければならないと感じてこの小説を書きました。
若竹登場人物たちはどこかで、少しずつ私の分身なんです。そんな分身たちを物語の中で生活させて、対話させる。そんな小説にしたいと思いました。ですが20代の保(たもつ)を書くのには苦労しました。私の年齢とはまったくかけ離れていますから大変でした。
若竹今まで生きてきた中で、自分の力で自分を鼓舞してきた出来事があったと同時に、周りの人たちに助けられたこともいっぱいありました。それが当たり前の世界のような気がするんですけど、今はそういうことが忘れられかけている。昔は家族や親戚、隣近所とか、自分の居場所がはっきりと存在していましたけど、そういうものが徐々に無くなってきていますよね。でも何かしらの人と人との繋がりって人間らしく生きるためにはとても大事なものだと思います。新しい形での共同体のようなものを模索してみたいという想いでこの小説を書きました。
若竹アパートの一室で吉野さんが作る料理をみんなで分かち合うことにより、そこが安心していられる居場所になるわけです。食べることって基本的なことですけど、とても大事なことですよね。大げさに言えば「自分を回復していく」ってこと。
若竹子供のころテレビで「ひょっこりひょうたん島」っていう人形劇が放送されていて、すごく面白かったんですよ。物語の中で、主人公のドン・ガバチョっていうキャラクターがよく「ドイツではニワトリはカッカドルドルドゥと鳴くのであります」みたいな台詞を話していて、とっても心に残っていたんです。題名を考えているときにたまたまそれが思い浮かんで、抽象的で惹かれる言葉だなと思って決めました。
若竹まったく考えていなかったです。一作目の時は結構緻密に考えて執筆したんですけど、今回は締め切りがあったんですよ(笑)。登場人物が絡み合っていく展開になるようにとかは考えていましたけど。ですから、単行本にするにあたってかなり改稿しました。
若竹私は小説を書く時は、話し言葉で書きたいんですよ。感情を前面にだした、「あなた(読み手)」に向かって語りかけるような文体がいいんです。それで、自分の想いを「あなた(読み手)」に直接語りかけるのであれば、私は東北の人なので東北弁で書くんです。標準語で書くとなんだか気取ってるような感じがするんです(笑)。なので友達に話しかけるみたいに書きます。
『かっかどるどるどぅ』
若竹千佐子
(河出書房新社/1650円)
【プロフィール】
若竹千佐子(わかたけ ちさこ)
1954年岩手県遠野市生まれ。岩手大学卒業。2017年「おらおらでひとりいぐも」で第54回文藝賞を史上最年長の63歳で受賞しデビュー。翌年、同作で第158回芥川賞受賞。
てんびん座O型の新人編集者。好きな食べ物は笹かまぼこ。自分史上最もおいしい笹かまぼこを決定すべく、色々なお店の笹かまぼこを食べ比べる日々を送る。どれもおいしくて選べそうにない。
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