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2022.09.12

【ひと夏の不思議な大冒険】石田祐康監督単独インタビュー『雨を告げる漂流団地』

皆さんこんにちは、S-style編集部・CINEMA担当のマタギです。

9月16日(金)公開の映画『雨を告げる漂流団地』。
夏休みを過ごす小学生たちの、ちょっと不思議な冒険ファンタジーです。
今回は、作品を手がけた石田祐康(ひろやす)監督へ、映画についてのお話をお聞きしました。
余すことなくお届けします!

夏の終わりの冒険ファンタジー

まるで姉弟のように育った幼なじみの航祐(こうすけ)と夏芽(なつめ)。小学6年生になった2人は、航祐の祖父・安次の他界をきっかけにギクシャクしはじめた。
夏休みのある日、航祐はクラスメイトと共に取り壊しの進む「おばけ団地」に忍び込む。その団地は、航祐と夏芽が育った思い出の家。航祐はそこで思いがけず夏芽と遭遇し、謎の少年・のっぽの存在について聞かされる。
すると、突然不思議な現象に巻き込まれ…、気づくとそこは、あたり一面の大海原。航祐たちを乗せ、団地は謎の海を漂流する。はじめてのサバイバル生活。力を合わせる子どもたち。泣いたりケンカしたり、仲直りしたり?
果たして子どもたちは元の世界へ戻れるのか?

©コロリド・ツインエンジンパートナーズ

あり得ないからおもしろい
団地の漂流で冒険が幕開け

本作で気になるのは、なんといっても「団地が漂流する」という設定。

「自分でも壮大だと思いました」と笑う石田監督。

「本来動くはずのない巨大建造物が動くなんて、あり得ないけど惹かれますよね。子どもの頃からそういったものが好きだったんです。映画『トップガン』を観た時に、巨大な空母が海上を漂うシーンで胸を躍らせたことを覚えています。空母自体が家のような造りになっていて、中には生活空間が広がっている。その機能をそのまま海の上に浮かべるなんてすごいなと。
今回の『団地が海を漂流する』という設定も、空母に似ているなと感じていました。ただ決定的に違うのは、空母は海に浮かべることを前提に作られているけれど、団地はそうではないという点。本来は漂流するものではないですからね。そんなありえないことがおもしろい。ギャップやおかしさを意識して作りました」。

航祐と夏芽、そして仲間たちの冒険は、団地の漂流によって始まります。「言わばスイッチのような役割にもなっているんです」と石田監督。

広い海の上にポツンと団地  ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ

主人公の航祐。幼馴染の夏芽となにやらギクシャクしています ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ

誰しもが想う大切な場所へ
さよならを伝える物語

作品を鑑賞する中で、団地に住んだことがなくてもどこか懐かしさや寂しさを感じた編集部。
そのことを監督に伝えると、「団地に限らず、きっと誰もが大切な場所を持っているからでしょうか」とひと言。

「作品を作る時に、『誰しもにある大切な場所』のことを考えながら描くことを意識しました。建物や空間は永遠に在り続けることはないんですよね。物理的にも心理的にも喪失感を感じることがあると思います。そんな気持ちへの折り合いの付け方を、今回は『団地』で表現できればと思い、制作を進めました」。

「夏芽が自分が生まれ育った団地を見送ったり、令依菜が遊園地の観覧車へ別れを告げたり。さまざまなシーンで『折り合いを付ける子どもたち』を描いています」。

航祐や安じいと共に、団地で過ごしてきた夏芽。思い出回想のシーンに涙が溢れます ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ

令依菜は観覧車にどんな思い出があるのか、劇中で確かめてみよう ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ

みんなの成長も見どころ
今の時代だからこそ繋がりを大切に

子どもたちは笑い合ったりケンカしたり、時にはケガを負ったりと、目まぐるしい冒険をくり広げます。

「あり得ない状態で漂流されているという絶体絶命の状態だからこそ、子どもたち同士の繋がりを強くして、固い絆でこの危機を乗り越えてほしい。乗り越えるしかないという想いを込めました。
人との繋がりが希薄で、分断されがちな今の時代だからこそ、子どもたちが協力して問題を乗り越えていく姿を描いています」

「航祐と夏芽が冒険を通して成長し、絆を再確認するシーンが物語の肝。ですが、ほかのキャラクターたちのバックグラウンドも描きたい気持ちでいっぱいでした!

元気いっぱいの太志は、一番子どもっぽくて常に走り回っているような子。でも最後には彼なりに覚悟を決めてピンチを乗り越えるシーンもあります。

譲はやさしくて気配りができるキャラクターですが、令依菜みたいに気が強い子がいたり、目の前でケンカが勃発したりすると手も足も出ない、少し弱気な一面も。そんな譲も、クライマックスでは強い意志を持って、みんなを率いる存在に成長するんです。

珠理はずっと令依菜の陰に隠れていたけれど、徐々に自分の気持ちを表すようになるシーンが印象的。

詳しくは描かれていませんが、みんなそれぞれ成長している点にも注目してほしいですね」。

「お気に入りのキャラクターなんて選べません!みんなそれぞれ思い入れがあります」と石田監督 ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ

気分はサバイバル!
映画を観る経験を味わおう

©コロリド・ツインエンジンパートナーズ

航祐や夏芽たちと同世代の子どもたちに、どんなことを感じてほしいか質問したところ、「映画館で『雨を告げる漂流団地』を観たという経験が、心に残ってくれればうれしい」と石田監督。

「自分が小学生だった頃は、作品の意図や具体的な主題を汲み取って映画を観るということはしなかったと思うんですよね。でも『この作品を観た!』という記憶はいつまでも心に残っています。そんな良い経験を、子どもたちにもしてほしい。今は『映画を観る』という経験を味わってもらいたいです。作品の深い意味を考えるのは、それからでも良いかなと思います。まずは冒険気分を、キャラクターたちと一緒に味わってください!」。

映画は9月16日(金)公開。
夏の終わりの冒険を、大人も子どもも一緒に楽しみませんか?

『雨を告げる漂流団地』
2022年9月16日(金)公開
監督:石田祐康
出演:田村睦心、瀬戸麻沙美、村瀬歩、山下大輝、小林由美子、水瀬いのり、花澤香菜
上映館:チネ・ラヴィータ、イオンシネマ新利府、イオンシネマ名取、イオンシネマ石巻、ユナイテッド・シネマ フォルテ宮城大河原
https://www.hyoryu-danchi.com/

©コロリド・ツインエンジンパートナーズ

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マタギ

趣味は山登り。山頂でコーヒーを飲み、下山後は銭湯に直行、ラーメンを食べて帰るのが理想の休日。最近は「Netflix」「Amazon Prime Video」「U-NEXT」を使いわけて、ドラマ・映画鑑賞の沼から抜け出せないでいる。