皆さんこんにちは、S-style編集部CINEMAコーナー担当のマタギです。
現在公開中の映画『シン・ウルトラマン』、皆さんはもうご覧になりましたか?
多くの人が幼少期、いや大人になった今でもそのカッコ良さに魅了される国民的ヒーロー「ウルトラマン」。そんなウルトラマンを題材にした今作の監督を務めたのが、数々の特撮映画に携わってきた樋口真嗣(ひぐちしんじ)さんです。
そんな樋口監督が映画を引っ提げて来仙!映画の魅力をたっぷりお話いただきました。
映画は、日本に次々と巨大不明生物「禍威獣(カイジュウ)」が現れ、その存在が日常となるところから始まります。通常兵器は役に立たず、限界を迎える日本政府は、禍威獣対策のスペシャリストを集結。「禍威獣特設対策室専従班」、通称「禍特対(カトクタイ)」を設立します。
そして禍威獣による危機が迫る中、銀色の巨人・ウルトラマンが突如として現れるのです。
樋口監督に、制作が決まった時の率直な気持ちを聞くと「自分が初代のウルトラマンから観ていた世代なので、一番初めの題材を取り上げたいという気持ちがありました」と話す通り、本作は数あるウルトラマンシリーズの中でも、初代に注目して制作されました。
「あとのシリーズの要素を取り入れると、『この人が出てきたらウルトラマン!』と、物語の中でウルトラマンが存在しているのが当たり前の世界観になってしまいます。それよりは『なんだあれは!』という段階から描きたかった。初めてウルトラマン作品に触れる人も入り込めるような設定で制作に臨みました」。
初代からウルトラマンを観てきた人ならわかるオリジナル版を彷彿とさせる演出が、本作では随所に散りばめられています。
何かメッセージを込めたのか聞くと、「好きだからのひと言に尽きます」と笑う樋口監督。
「自分も含めて、当時ドハマりした人たちはウルトラマンの魅力から逃れられないんですよね。それを上回るような作品を作ろうとしても、オリジナルにはかなわない部分がある。それならその良さを受け継いで、さらに深掘りしていったほうがいいのではないかと思いました」。
樋口監督の円谷作品へのリスペクトが、作品全体に表れているのです。
テレビでは30分で放送されていたウルトラマン。1エピソードの中で事件が起こり、ウルトラマンが登場して問題を解決する。その30分間で、多くの少年少女がテレビ画面にくぎ付けになりました。
凝縮された時間の中で展開されるストーリーがおもしろかった一方で、「映画にするには難しいポイントだった」と話す樋口監督。
「30分の話をただ広げるのではなく、いろんなエピソードが出てくる内容にしたいというのがありました。かといって、それが団子のようにただ串刺しになって展開されるのではなく、それぞれが有機的に繋がっている。これまでのウルトラマンとは少し違う考え方をしなければならなかったのは難しかったですね」。
ところで、映画冒頭からものすごいスピードで話が進んでいく本作。「とにかくついていくのに必死で、気付いたら物語にのめり込んでいました」と樋口監督に伝えると、「もう1回観て確かめたいという気持ちにさせたい」とひと言。
「1回観ただけではわからないからもう1回。自分が何か見落としているのかもと感じてもらえたらありがたい。気を付けないとふり落とされてしまうスピード感が爽快で気持ち良い作品になったと思います」。
本作の見どころのひとつが、「禍特対」の豪華な面々。
班長・田村君男を西島秀俊、作戦立案担当官・神永新二を斎藤 工、非粒子物理学者・滝 明久を有岡大貴、汎用生物学者・船縁由美を早見あかり、そして途中から禍特対に加入する浅見弘子を長澤まさみが演じます。
物語が進むスピードが速いのと同様に、禍特対のメンバーたちのセリフ回しもとにかく速く、緊迫した空気が流れます。
そのことについて樋口監督は、「(緊急事態に対応する政府の人や自衛隊の人など)実際にそういう仕事をしている人たちの口調を真似してほしいと伝えました」。
「実際に業務にあたっている人たちは、お芝居で言うところの『感情』があまり入らないと思うんです。なので俳優の皆さんには『いつもの演技のような感情の乗っけ方はしないでください』と伝えました。でもそれだけでは演技が下手に見えてしまう。なので『下手に見えないように感情を抜いていく』ことを、宿題のようにお伝えしました」。
禍特対メンバーのほかにも実力派キャストが揃いますが、劇中でひとり気になる人物が…。
山本耕史演じるメフィラスと神永新二が居酒屋で対話するシーン。その店長役で、映画監督の白石和彌さんが出演しているではありませんか!
「撮影までの準備をスタジオでしていた時、向かい側のスタジオで打合せを終えた白石さんと遭遇しまして。話を聞くとスケジュールが3ヵ月空いているということで、急遽出演してもらいました。本編で使用したシーン以外にもたくさん撮影したんですけどね(笑)。やむなく1カットのみの出演となりました」。
そんな裏話を聞いたならば、映画を観てそのシーンを確かめたくなりますね。
ここまでお話を聞いて、ウルトラマンへの愛とリスペクトが溢れる樋口監督に「ウルトラマンの魅力とは何か?」と質問しました。
「いろんなウルトラマンがいますが、初期のウルトラマンはとってもポジティブ。素直なんですよね。そこに魅力を感じます」。
「シリーズを重ねるごとに『何で俺はウルトラマンなんだ』と思い悩む主人公も出てくるんですよね。でも最初の頃のウルトラマンはその辺の曇りがない。登場人物も素直なキャラクターばかりで、誰も二面性がないんです。(初期の頃の)ウルトラマンの根本のほうにある志を意識して、『シン・ウルトラマン』を作りました」。
「子どもの頃に観ていたウルトラマンは、地球に悪い人がいないから宇宙から敵がやってくるという物語だった」と振り返る樋口監督。
「でも現実はそうではなく、地球上にはまだまだ解決しないといけない問題が山積み。そんな問題を乗り越えるくらいの物語を作りたいという願いを、当時の人たちはウルトラマンに込めたんじゃないかと思います。現代はそんな願いも持ちづらい世の中になってしまった。『シン・ウルトラマン』を観て、希望を持つということを子どもたちに伝えていければうれしいです」。
映画は絶賛公開中。ぜひ劇場でご覧ください。
映画『シン・ウルトラマン
【企画・脚本】庵野秀明
【監督】樋口真嗣
【出演】斎藤 工、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、田中哲司/西島秀俊、山本耕史、岩松 了、嶋田久作、益岡 徹、長塚圭史、山崎 一、和田聰宏
【上映館】TOHOシネマズ仙台、MOVIX仙台、イオンシネマ新利府、イオンシネマ名取、109シネマズ富谷、イオンシネマ石巻、シネマ・リオーネ古川、ユナイテッド・シネマ フォルテ宮城大河原
【HP】https://shin-ultraman.jp
趣味は山登り。山頂でコーヒーを飲み、下山後は銭湯に直行、ラーメンを食べて帰るのが理想の休日。最近は「Netflix」「Amazon Prime Video」「U-NEXT」を使いわけて、ドラマ・映画鑑賞の沼から抜け出せないでいる。
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