こんにちは、S-style編集部のシネマコーナー担当・マタギです。
4月16日に、石巻の『マルホンまきあーとテラス』にて、アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』の特別上映会が行われました。
上映会の後にはトークイベントも行われ、なんと!企画・プロデュースした明石家さんまさんと、渡辺 歩監督が登壇。
映画に込めた想いや制作の舞台裏をたっぷり聞かせてくれました。
主人公は、お人よしでほれっぽい肉子ちゃん。男にだまされやすく、失恋するたびに娘のキクコと共に各地を転々とする人生を送ってきて、ある時小さな漁港に流れ着きます。 そこで肉子ちゃんは妻に先立たれたサッサンが営む焼肉屋『うをがし』で働くことに。母娘はサッサンが所有する漁船で暮らし始めるのです。
小説家・西 加奈子さんの小説が原作のこの作品。
舞台のモデルになったのが、石巻・女川でした。
西さんが宮城を旅した際に出会った女川の焼肉屋が印象に残り、この作品を書き上げたと話しています。
(C)2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会
特別上映会が行われたのは、聖地・石巻の『マルホンまきあーとテラス』。
プロデューサー・明石家さんまさんと渡辺監督が登壇した上映後のトークイベントも盛り上がり、たくさんの笑顔が咲く時間となりました。
皆さんにも特別に、トークイベントの内容を公開しちゃいます!
明石家さんまさん、渡辺 歩監督、イベントのMCを務めた石巻の「ほやドル」萌江さん
さんまさん『漁港の肉子ちゃん』を観ていただいて本当にありがとうございます。石巻は11年前、フジテレビの『27時間テレビ』の中で夏に訪れました。そして今年こうやってくることができましたが、遠い!仙台駅から車で1時間半。腰が痛い。東京から仙台まで2時間20分。仙台から石巻まで1時間。サイパンの方が近いです。
監督このような機会をいただきましてありがとうございます。本日はどうぞよろしくお願い致します。
さんまさん映画は去年の6月に公開だったので、本当は7月くらいに(イベントを)やりたかったんですけどね。モデルになった土地ですからね。なんですぐに呼ばなかったんですか!
日野さん石巻には1館しか映画館がなくてですね。
さんまさん嘘やん!
日野さん残念ながらそこでは上映されなくて。渡辺監督から、「石巻で(上映したい)」というお声をいただいてこの度実現しました。
さんまさんそんなチャンスを頂いたということですか。ありがとうございます!
日野さん監督に声を上げていただかなければ、もしかしたらなかったかもしれませんね。
監督私は密かに石巻で上映することを目標としていました。今日この地で、「肉子ちゃん」を上映することができてうれしいです。
原作を読んで、その時からこの地の皆さんに届けたいなと思っていました。
さんまさん西 加奈子さんの作品で『サラバ』という小説があって、初めそれを取ったのが始まりでした。上下巻がある作品なんですけど、本屋さんで並んでいるのを見た時に、「上西かなこさん」っていう人が直木賞を取ったんだと思いまして。そしたら同じ棚に「下西かなこ」の本もあるじゃないですか。自分の勘違いがおもしろくて、それで興味が湧いて手に取ったんですね。そしたら一行目に「明石家さんま」の文字があって。その一行との出会いのおかげでここまできました。西さんは小説での関西弁の使い方がうまいんですよね。それに感動して、西さんの小説をいろいろ読んで、その中の一冊が『漁港の肉子ちゃん』でした。
ぜひ映像化したいと思って、よしもと興業の岡本会長に話をしたのが始まりです。そして渡辺監督を紹介してもらって、絵のタッチはどんな感じにするかとか。キャスティングはどうするかとか。最初の打ち合わせから2年かけて作ってもらったものを説明してもらったんですよね。「監督、すごいですね」と言ったら、「これで5分です」と。
監督2時間かて5分のシーンを説明しましたね(笑)
さんまさんそれからさらに2年半くらいかかってやっと完成しましたね~。
監督プロデューサーとしてその間もずっと目配りしてくださいましたね。
監督こう見えて渡辺監督は有名な作品をたくさん手がけていらっしゃる方なんですよね。こないだ家族で集まった時に映画の話になって。大竹しのぶさんに声優をやっていただいたんですけど、いろいろ映画賞を受賞しておめでとうと言ってもらいまして。息子の二千翔(にちか)が一番好きな映画がまさかの監督が手がけたドラえもんの映画!ものすごいびっくりしていました。
なので、二千翔に「肉子ちゃんどうやった?」て聞いたら「見てねーし」って言われちゃいました。
さんまさんそうですね。本人はあんなにステキな人じゃないんですけどね。
監督がずっと「肉子ちゃんは大竹しのぶ」とおっしゃってたんですけど、僕は最初嫌でね。監督は大竹さんのファンなんですよ。
監督一つ夢が叶いました。
さんまさんだから初めて収録に来た時、一人で拍手してましたよ。
さんまさんCocomiちゃんの声優ぶりには一番驚きましたね。
10歳くらいの頃、当時声優の勉強をしているということで、「いつかアニメを作るから主役お前な」と冗談で約束をしたんです。いつか作ろうとは思っていましたが、その時の約束をいつか守らなあかんなと思って、オーディションに呼んだんです。そしたら監督から、「この役、ココちゃんにしましょう」と話が上がりました。
セリフは全て大阪弁なんですよね。方言の独特なイントネーションを伝えるときに、ココちゃんは音符で書きよるんですよ。それで声を当てたらOKもらって。セリフに全部音符記号を書いてるんです。そのあたりも楽しんでもらいたいですね。
さんまさん本当にこうして機会をいただいてありがとうございます。こうしてたくさんに方に来ていただいてうれしいです。そしてこうして石巻にこれたことにも感謝しております。今日は本当にありがとうございました!
監督(コロナや地震で)大変な中でお越しいただいてうれしく思います。肉子がこうして少しでも多くの方に癒しの時間を与えられればと思います。本日はありがとうございました!
ほやドル・萌江さんの奔放なほやほやMCっぷりに、さんまさんもタジタジ!
イベント後には、報道陣を集めた記者会見も行われました。明石家さんまさんが東京や大阪以外の地方でこのような会見に対応するのは異例とのこと。
今作に込めた想いや熱量、そしてモデルとなった石巻への気持ちが感じられました。
さんまさんこれだけの多くのかたに来ていただけるなんでびっくりしました。石巻を舐めてました(笑)
監督たくさんの方に来ていただいて、本当にありがたく思っております!
さんまさんとても驚いております。中でも韓国の映画賞を頂いたのですが、そちらの審査員が渡辺監督なんですよね。「そりゃあ取るやろ!」と思いましたね。
日本アカデミー賞の優秀賞や報知新聞賞もいただきましたし。報知新聞賞のトロフィーは脆くて、すぐに壊れちゃったんです(笑)。取り替えますって言われましたが、「大丈夫です。ボンドでくっつけました」と伝えました。ここまでこられたのも監督のおかげです。ありがとうございました。
監督作品に込めた想いが国を超えてちゃんと伝わるんだなと、この映画を通して感じました。
さんまさんたくさんのお客さんに来ていただけてとてもうれしかったです。仙台駅から車で来たんですけど、10年たってかなり復興も進んでいるのを感じました。
監督この映画の企画をもらって、原作を読んだ時からこの映画はぜひ石巻で上映したいと思っていました。必ず石巻で上映できることを念頭に、映画を作りたいなと思っていました。夢が叶って、しかもこんな大きな会場で多くの方に見ていただけて、驚きです。
さんまさん11年前は、高速道路を降りて山を越えた時に何にもなかった土地を見てショックを受けたのを思い出します。山のこっち側は家があって「結構大丈夫だ」と思ったのに丘を越えたら何もなかったんですよね。それが今は家が建ち、店が建ち、ビルが建ち。今日は驚きました。人の力って本当にすごいなと改めて感じました。
あとは、今日仙台から運転してくれたドライバーの方がちょっとスピード出し過ぎ。
さんまさん肉子ちゃんの人生を見て欲しいです。私は二千翔という息子を育ててきたという背景があるので、自分と照らし合わせながら作った映画でもあります。何回見てもクライマックスの病院のシーンは泣いてしまいます。人それぞれだと思いますが、人間とはこういうものだ、仲間ってこういうものだというのを感じて欲しいです。
監督故郷を想う時に人は何を根拠に故郷を感じるか。人それぞれの中に答えがあると思いますが、それを引き寄せたときに、それぞれにとって大切な故郷を覚えるんじゃないかと思います。石巻という一度失われた街を映画で取り戻すと言ってしまえば容易に感じられますが、それをこの映画でできたことが意義があると思います。この映画を見て追体験してもらいたいです。それが月日が経って「忘れない」ということに繋がるのではないかと思います。それぞれにとっての故郷を感じてもらいたいです。
劇中で雪が降るシーンがありますが、震災直後に降った雪は本当に絶望的な雪だったと思いますが、劇中では希望の光として描いています。そこをみなさんに感じてもらいたいです。
さんまさん本当は最初に実写化の話があがったんです。ですがキャスティングが非常に難しく、肉子ちゃんときくりんのキャステイングがうまくいかなくて。オーディションにしようかという話まで行っていたんですが、当てはまる役者さんがいなくて、これはアニメにしようと切り替えました。そして渡辺監督にオファーしたところ「すぐできる!」と返答があったのですぐに制作に取りかかりました。
さんまさん「この原作なら渡辺監督がぴったりだ」とお薦めしてもらってお声がけしたのですが、本当に落ち着きのない方でね。「こいつで大丈夫かな」と思ったんですが、「初めてのアニメ作品だしこいつでええか」と思って。後々聞くとすごい監督だということがわかって、1年後に謝りました(笑)。そして息子の二千翔が1番好きな映画が監督のドラえもんの作品だということにも驚きました。大竹さんには、その監督の凄さを知らなかったんだよと子どもたちと馬鹿にされましたけどね。それくらいすごい監督です。
さんまさん本当に驚きました。10歳の時の約束を私も覚えていましたが、本人も覚えていて一度オーディションに呼びました。監督が声が美しいとおっしゃっていたんですね。声が美しいなんて、僕言われたことないですし。初めての芝居で初めてのセリフで初めての大阪弁にもかかわらず、この出来栄えに持っていったというのはココちゃんの努力の賜物だと思います。
木村(拓哉)に言いましたもん。「お前仕事しなくでええで。ココちゃんが稼ぐから」と。ココちゃんはとても勉強してきていて、1シーン1シーンすごい家で練習したということが見ていてわかりました。
さんまさん僕は200回は見たと思いますけど、飽きない!細かいところを探している場合じゃない。真正面から見てほしい。
監督アドリブが非常に多いんですね。もともとあったセリフから、さんま師匠がアレンジされた部分が多いので、耳で確かめていただくのも楽しいかもしれませんね。もしかしたらここがそうかななどと。だいぶさまざまな仕かけが散りばめられています。偉大な芸人さんの名台詞が隠れていたりして、ぜひ探してみてください。
原作は東日本大震災前に書かれた作品ということもあり、映画では震災前の石巻・女川の風景が一部残って描かれています。地元民ならではの楽しみ方もできるはず。
さんまさん、渡辺監督からの言葉を受けて、『漁港の肉子ちゃん』が観たくなったという方は、ブルーレイやDVDでお楽しみください!
私ももう一回観て、どこがアドリブなのかチェックしたいと思います!
漁港の肉子ちゃん
DVD、Blu-ray発売/2022年4月27日(水)
https://29kochanmovie.com/
会場の『マルホンまきあーとテラス』は陽の光がたっぷり差し込む美しい施設でした!
趣味は山登り。山頂でコーヒーを飲み、下山後は銭湯に直行、ラーメンを食べて帰るのが理想の休日。最近は「Netflix」「Amazon Prime Video」「U-NEXT」を使いわけて、ドラマ・映画鑑賞の沼から抜け出せないでいる。
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