S-style11月号にご登場いただいたナオト・インティライミさん。誌面に掲載しきれなかったインタビュー全文を、日刊Web限定で公開します!
編集部(以下:編)デビュー10周年おめでとうございます!この10年は、ナオトさんにとって率直にどんな10年でしたか?
ナオト・インティライミ(以下:ナ)人生が大きく動いた10年でしたね。これまでデビューを2回失敗しているので、この10年に起きた現象がどれだけ奇跡的で、どれだけ幸せでありがたいことかをものすごく感じています。幸せを感じる瞬間…。これはもう、キーになる場面がたくさんあるんですけど、例えばはじめてチャートに自分の名前が載った時。一度目のデビューも二度目のデビューもオリコンからなにから、なにしろチャートに入るなんて論外だったので、チャート入りということがやっぱりすごいことなんですよね。
僕らの目に入っているのは、チャートとかランキングに入っているものしか見えていないわけですけど、実はもっとたくさんのアーティストと曲があって、漏れているものって見えないところにたくさんある。僕はそちら側の立場だったので。最初僕は、配信ランキングでチャートに入れてもらったんですけど、周りの方々がそうそうたるアーティストで。自分自身が聴いて育ってきたような人たちだったんですよ。その中に自分の名前があるという喜びはひとしおでしたね。テレビ番組で歌を歌わせてもらうことになったり、紅白歌合戦、ドーム公演を2回もやらせていただいたりとか。「徹子の部屋」、「笑っていいとも!」、「情熱大陸」といった国民的番組に自分が出ていることとか。幸せを感じる瞬間がたくさんあった10年でした。
編:10年間の活動の中でターニングポイントをあげるとしたらどんな出来事を覚えていらっしゃいますか。
ナ:2つあげるとしたら、「今のキミを忘れない」という曲をリリースできたことと、2017年に一度活動を止めて、世界への挑戦をはじめたこと。この2つは自分の人生の大きな転機じゃないでしょうか。「今のキミを忘れない」は、さっき言っていたような国民的な番組に出演できるステージに導いてくれた曲。この曲がなかったら、こんな規模感でナオト・インティライミを認知してもらえてないんじゃないかなと思っています。
編:活動休止されたことも大きなニュースでしたが、なぜそのタイミングで決断をされたんですか?
ナ:タイミングはずっとうかがってたんですよ。いつか世界で活躍したい。そのためには日本でまず成功しないとだめだという想いでやっていたのもあるので。海外へ踏み切るタイミングをいつにするのかというのは、本当に自分次第でした。色々と活動を続けてきた中で、もちろんまだまだ日本で第一線に入れたわけじゃないけど、でもこのタイミングで一つ分岐してもいいんじゃないかと。日本の活動を止めるわけじゃなくて、平行して挑戦をはじめてもいいんじゃないかと自分の中で思えたタイミングだったんでしょうね。日本での活動を休止している間にやっていたことは2つありました。一つは久しぶりに長旅をする。もう一つは世界への挑戦をする。この2軸です。これは似ているけど、僕の中では全然違うもの。旅としてはアフリカ14ヵ国を中心にルーマニア、スウェーデン、ドイツを巡りました。そこまでがいわゆるプライベートの旅で、その後にLAに飛ぶんですけど、そこからは世界への挑戦をいよいよ始めるというステップ。この40年培ってきたものを持って、世界を舞台に戦いに出るという挑戦でした。
編:LAでの“挑戦”は、具体的にどんなことにチャレンジされていたんでしょうか。
ナ:本当にコネクションもなにもないところからだったので、現地の人に会って、知り合いになった人に自分の曲を聴いてもらって。そしてまた人を紹介してもらって。5人紹介してもらったらその5人に会いに行って歌って。また紹介してもらって…をずっとくり返し。自分の表現を辿る作業という感じでしょうか。日本での活動を再開した後も、実はこの3~4年間、コロナ禍に突入するまでは年に3ヵ月程度は海外でそういった活動を続けていました。
編:早くコロナが終息して、また挑戦を始められる日々が戻ることを願っています。コロナの影響は、10周年イヤーにも影響を与えましたよね。本来2020年に10周年イヤーが行われるはずでしたが、1年の延期を余儀なくされました。2021年に1年遅れで10周年イヤーをはじめるまでの期間はどう過ごされていましたか?
ナ:はじめは絶望という言葉しかありませんでした。僕はとくに大ヒットしたような曲もないし、いわゆる大ブレイク!みたいなアーティストではないと思っています。ライブやフェス、イベントでこつこつお客さんを増やしていったような現場戦場主義タイプ。そんな自分の一番の得意分野であり、持ち味を全部奪い取られてしまったような気持ちだったので、どうしたらいいのかという絶望の気持ちが大きかったんですけど、そこはうだうだしていられないと。この状況下でどうしたらいいかと考えた中で、TikTokをはじめて年甲斐もなくがんばりましたね(笑)。TikTokってやっぱり若い世代のものっていうイメージがあるじゃないですか。でもなんか本当使い方というかね。それによって出会えた世代の皆さんの存在は大きかったかな。コロナがなければ、TikTokにチャレンジすることなんてなかったでしょうし、配信ライブなんて思いもよらないし、ライブ後のアフタートークや打ち上げを配信しちゃうみたいなことも考えたこともないし。そういう意味では、改めて“繋がり方”というのを考え直した期間でしたね。
編:コロナがあったことによって、リアルな場所以外でのコミュニケーション方法が多様化したという事実はあるかもしれませんね。そんな中、今年は1年待った10周年イヤーを開催中のナオトさん。すでに各地でのライブもスタートされていますが、久しぶりにファンの皆さんと同じ時間を共有するライブはいかがですか?
ナ:本当にお互いがこの時を待っていたんだろうなと感じました。僕も待っていたし、お客さんも待ってくれていた。しかもそれがそのどちらか一方じゃなくて、誰も悪くない、仕方ないなにかによって会えなかった時間が生まれていたので。改めて、すごく幸せな時間だなと思いました。ライブって、特別なことだったんだなと痛感させられましたし、これだよね、俺らってこれだよねというのを(ファンの皆さんと)分かち合ったというか。声を出せないとかタオルを回せないという制約はあるけれど、全然さみしくないし変な空気にもならない。よく、「やりづらい空気にならないんですか?」と聞かれることがあるんですけど、全然そんなことはなくて。それはきっと、お互いの想像力と絆みたいなもので補えているんじゃないかなと。それから僕も、エンターテイナーとしてぬかりなく準備していますよ。制約があるからと言ってバラードライブをやるつもりはないよと(笑)。ちゃんとコロナ禍でもどうやったらお客さんがエンターテインメントとして楽しめるか、一緒に参加できるかというあの手この手を、なにしろ知恵をふりしぼってショーを作ってきました!今言えるのは、しっかりストレッチしてきてくださいってことかな(笑)。
この2年間色々我慢してきたこととか、たまっているものも多いでしょう。これはもう全然ティライミのファンの方のみならず“ナオトの曲一曲も知らんけど大丈夫なの?”という方も、もちろん大丈夫です。みんなをちゃんと楽しいところに連れて行けるようなそんなショーにしておりますので。キッズから中高年の皆さんまで、誰も置いていかない。はじめての方でも絶対に楽しませます。もし全然楽しくなかったという人がいたら、ナオトが自腹でお金かえしますよ。チケット代自腹で返させていただきますと、そのくらい自信があります(笑)。それと、やっぱり10周年ですからね。10周年ライブというのは一生に一度のことなので、一緒にお祝いもしたいですし、この11年間歌い続けさせてくれてありがとうという僕の心からの感謝を直接伝えたいというのがあります。ちょっとファンやっていたけど最近離れちゃってて、ありがたくも今回の記事を読んでちょっと行ってみようかなと思うカムバック組にもそれは本当に感謝。そんな皆さんのおかげで今の僕はあるのでね。感謝を伝えさせてもらいたい場でもあります。
編:久しぶりのライブという方も多そうですから、ストレッチは入念に行って臨みたいですね(笑)。
編:さて、ベストアルバム『The Best -10th Anniversary-』ですが、ジャケットの“10”のハンドサインがいいですね。
ナ:気付いてくださってありがとうございます。“10”というモチーフを作るにあたって、両手でグー・グーと。オッケーだよ!というポジティブなハンドサインがポイントといいますか。ナオト・インティライミらしいなと。…って、実は僕のアイディアじゃないんですけどね(笑)。これはもう、チームに素晴らしいクリエイターがいまして、その方が考えたアイディアが「これ最高だね!」と満場一致だったので、精いっぱいやらせていただきました。…いましゃべりながら「僕のアイディアってことにしようかな…」って一瞬悩んでいたんですけど、ちょっとウソつけなかったです(笑)。
編:正直なナオトさんが素敵なので、このエピソードはぜひ大々的に書かせていただきますね(笑)。さて、ベストアルバムは2枚組ですが、収録曲の中から隠れた名曲を選ぶとしたらどの曲をピックアップしますか?
ナ:42曲の中から1曲…難しいな~。これね、選べなくて選べなくて…の全42曲になっちゃってますからね(笑)。そういう意味では2枚組というのがポイントかもしれない。「BEST」にはほぼすべてのシングル曲がリリース順に収録されています。なので、デビュー曲の「カーニバる?」から「タカラモノ~この声がなくなるまで~」…。それぞれの人生の中でこの11年間って大きな期間だったと思うんですけど、あの時こんなことやりながらナオト・インティライミのこの曲をCMで聞いたなとか、皆さんの自分史に照らし合わせながら聴いてもらえるといいかもしれません。あの時はまだ学生で、部活でがんばっていた時にあの曲が流れていたなとか。曲と、その当時の記憶をセットで思い出してもらえたらうれしいです。「MUST」の方は、これまで出したアルバムの中であまり知られていないような日陰な曲なんだけど、僕的に聞いてほしいというおすすめだったり、ファンの方のアンケートで人気だった曲を中心にセレクトしました。ライブの定番曲という基準でも選んでいます。「コロナ禍でTikTokをきっかけにティライミのことを知ったけど、ライブにいってわたし浮かないかな~」と思っているそこのアナタ。「どんなノリでみんなライブやっているのかわからないし…」みたいな方はこの「MUST」を聞いてきてくだされば絶対にライブで浮くことはありません。予習もできちゃうよと。捨て曲なんてございません!「BEST」だけでも「MUST」だけでもダメなんですよね。20曲と22曲の合わせ技がナオト・インティライミなんです。皆さんがよく知ってくださっているのはきっと「BEST」のシングル曲だと思いますが、実は70ヵ国を旅してきた旅人系シンガーソングライターの個性は「MUST」にたっぷり詰まっている。ぜひ42曲の2枚組を聞き倒していただきたいです。
編:1枚に20曲という曲数もかなり多いなという印象ですが、「あ、この曲懐かしい~」と思いながら聴いていると、あっというまに1枚を聞き終えてしまいそうですね。
編:先の質問の中で、転機になった曲として「今のキミを忘れない」をあげてくださいましたが、これはどんな背景があるんでしょうか。
ナ:この曲は、北川景子さんが出演する携帯電話のCMのお話をいただいて書き下ろした曲です。恋人同士の別れをピアノで表現したらどうなるんだろうと考えながら作りました。時期的に卒業シーズンの卒業ソングとしても聴いていただける言葉選びをしました。男女の二人だけストーリーを書いてしまうと卒業ソングにはならないので、どちらにも解釈できるような曲にしたいなと。
それからこれは、運命的な話になっちゃうんだけど、「今のキミを忘れない」という曲は別れの曲なんですね。これを2011年の2月にリリースして、2011年の4月に「Brave」という勇気の歌を出すんです。この順番だったから、この曲たちがリリースできた、あるいはナオト・インティライミがこの曲を歌えてきたんです。もし元々のリリースの予定が逆だったら…世に出せていなかったと思います。それは2月と4月の間に東日本大震災が起きたから。震災の後に「別れ」がテーマの曲は到底出せるはずがないし、奇しくも震災が発生する前に書いてあった曲ではあるけども、「Brave」という曲をさまざまなシーンで被災地に想いを寄せて歌うことが多かったので、これは本当になにか人間の力では想像できないような運命的な2曲だったなと思います。震災の後、僕は石巻に通っていたんですけど、自分が2010年の4月にデビューして1年も満たない中で東日本大震災が起きて。それからの自分の10年間は、東北の皆さんと共に歩んできたという想いがすごく強かったですね。当時僕はテレビとかもほとんど出ていなくて、いわば有名人でもなんでもなかった。それでも、自分にできることがなにもないとは思ってなかったので、ガレキ撤去からなんでもやりました。漁師さんに「お前、そこちがうっぺー」なんて怒られながら網の縄のまとめ方を教えてもらったり。そんなことをしながら、徐々にテレビにも出させていただくようになると、「お前ってナオト・インティライミなの?」って言ってもらえるようになってきて。震災があった時、有名な方が歌の力で励ましていたりもしたけど、僕の場合は当時到底及ばなかった。だからこそ、ガレキ撤去とか漁業支援で少しでも力にと思ってやっていく中で、数年後に「歌ってよ」と言われた時は、自分ができることが一個増えたんだなと思ってすごくうれしかったですね。ずっと通っていくことで、全国にその時の東北の一ヵ月、半年、一年の状況を伝えてきたつもりだし、現地の方とは深い繋がりを感じています。
編:「今のキミを忘れない」と「Brave」のお話は、なんだか鳥肌がたってしまいました。ナオトさんと東北の絆を知ることができてうれしいです。ちなみにライブでいらっしゃった時は、仙台・宮城のファンの印象ってなんかありますか?
ナ:これがおもしろくてね。東北の関係者の方々から、「東北人はスロースタートだ」とか「シャイだからおとなしくてやりづらいでしょ」とか言われるんですよ。なんですけど、それを本当に感じたことがなくて。ナオト・インティライミを見にくるような方は、やっぱりちょっと(いい意味で)いっちゃってるなと(笑)。最初からもうね、モードに入ってます。仕上がった状態で会場入りしている。全力で楽しもうとしてきているというかね。自ら発電している感じ(笑)。東北人特有の“むっつりアツい”精神あるじゃないですか。そのむっつりが、最初から漏れちゃってる(笑)。ティライミの会場だと、むっつれてないんですよ(笑)。駄々洩れ状態です。いいことです、最高なことですよ、誇らしいです。
編:むっつりアツい…!東北人を的確に表している表現な気がします(笑)。ナオトさんの会場だからこそ、漏れちゃっているという面もあるかもしれませんね。それでは最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします!
ナ:ベストアルバムは聞いてほしいですけど、CDは買う必要もないですよ。CDデッキがない方もいらっしゃいますしね。各々のサブスクでベストアルバムは聞いてねと(笑)。やっぱりナオト・インティライミの持ち味はライブにあると思いますし、本当に久しぶりの仙台公演です。2年ため込んだこの気持ち、あるいは10周年の感謝の気持ちを皆さんに伝えられる大きなチャンスだと思っていますので、絶対損はさせません!うっかり当日会場に足を運んでくださいと、そう伝えさせてください。しっかり腕を伸ばしてきてください!
ナオト・インティライミさん、楽しいお話をありがとうございました!現在「10周年!アンバーサリーおまっとぅりYEAR」を冠に全国ツアー中のナオトさん。仙台公演は12月4日(土)、『仙台サンプラザホール』を会場に行われる予定です。ファンの皆さんはこちらもお楽しみに!
小学2年の息子を追いかけながら、日々せっせと働くワーキングマザー。「せんだいタウン情報S-style」第18代目編集長やってます。BTSが好きすぎて、やたらと韓国料理ばかり作っているただのARMY。
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